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2024年7月7日日曜日

科学論文の書き方、#3。英語と日本語と情報伝達方法の普遍性。

前回の記事の第3節で書いた私の主張、「人間にとって普遍的に理解しやすい情報の伝達方法」の存在が私の願望であるという自覚はあります。同時に、この願望は私の不満の裏返しです。私の不満は、「英語は科学論文執筆に適しており、日本語は適していない」という主張への不満です。

この英語適切日本語不適切の主張は、「科学英語論文のすべて 第2版 | 日本物理学会 」から知りました。科学者らしく質問しましょう。日本物理学会への質問は、「どのような仮説と検証を行い、その結論に至ったのか?」、です。

第1節では、この英語適切日本語不適切の主張に対する反論を述べます。第2節では、英語適切日本語不適切の主張の検証方法について述べます。


1. 英語適切日本語不適切への反論

私の反論は以下の二点です。

  1. 日本語であれ英語であれ、どの言語であれ、最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルを選択することで、科学論文に相当する情報伝達を実践できる。
  2. 英語適切日本語不適切を主張する日本人研究者たちは、自身の観測範囲にいるテクニカルライティングに長けた欧米研究者とのコミュニケーションの結果のみから、英語適切日本語不適切を主張しているのではないか。

1.1 日本語でも英語でも科学論文は執筆できる

1についてですが、私だけでなく、多くの人が実践している行為を紹介します。英語論文、英語記事を作成する際、最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルで日本語の文章を最初に執筆し、それを機械翻訳し、英文を調整します。実体験として、明らかに日本語でも科学論文のスタイルで文章を執筆できます。日本語に科学論文のスタイルを適応したら、その意味が理解できなくなるということはありません。

現在では、日常的なゼミ発表、学会や企業のプレゼンにおいて最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルが採用されています。日本語でこのスタイルで発表されたら、内容を理解できなくなりますか?

英語において、逆もまた真なりです。英語において、理由や詳細から先に書き始めたら、それらの英文を理解できなくなるわけではありません。きっと結論に至るまでに、聞いてる人、見てる人はイライラするでしょうが。

これらの事実から導かれる結論は、次のとおりです。

×、「英語は科学論文執筆に適しており、日本語は適していない」

〇、「現在の英語の日常的な用法は、科学論文における情報伝達方法と親和性がある。現在の日本語の日常的な用法は、科学論文には適していない。」

この「現在の日本語の日常的な用法は、科学論文には適していない」ことの意味は、これまでの日本の文化として、その主な会話のスタイルが「理由を先に述べ、結論を後に述べる」、ということです。

繰り返しますが、日本語でも英語でも最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルで執筆することは可能です。となると、このスタイルが何かしらの特徴、特性を持っていることが推測されます。私の主張では、この最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルは、「人間にとって普遍的に理解しやすい情報の伝達方法」です。

1.2 日本人研究者たちによる日本語サゲ英語アゲ

冒頭の質問を繰り返します。「どのような仮説と検証を行い、『英語は科学論文執筆に適しており、日本語は適していない』という結論に至ったのか?」

1についてある程度の同意が得られるなら、2についてはそっと目をそらして、今後は触れないのが日本人の大人の態度かもしれません。とはいえ、日本物理学会の名前のもと、論文執筆教育の一環として情報を流布し、図書の出版によってそれなりの収入をあげていたのなら、一定の処置はすべきでしょう。

発展的解消としては、最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルについて日本語と英語の差異を定量的に研究して、結果を日本物理学会の学会誌(和文)に載せ、「科学英語論文のすべて 第3版」として内容を改めて出版することでしょう。もっと言えば、たぶん科学技術系の人間にとって最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルでの報告書作成(科学論文含む)はやって当たり前のことなので、その辺の社会普及、教育についてしっかり活動すると、日本物理学会としては、「ちょっとした不適切なミス」を補って有り余るような、社会的意義、社会的存在感を得られるのではないでしょうか。


いろいろ海外の学会にも出席して、その土地の人々と交流して、さらには映画や海外ドラマも楽しんで、どう考えても「英語すごいね!日本語駄目だね!」とはならない。どこも変わらず、同じぐらい優秀かつ同じぐらい愚かな、喜怒哀楽の人々がいて、日本語も英語もそんな人々が使っている言語にすぎない。英語の使用によって、何か良いことだけがあるとは到底思えない。

根本的に、「英語は上水道のように論理展開し、日本語は下水道のように論理展開する」という例えが気に入らない。執筆者たちは、どれだけの悪意を込めたのか。それとも軽いノリだったのか?


科学論文の書き方、#1。節内部、段落内部での「最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」の実践

科学論文の書き方、#2。文は、主語を短く、その後を長く。

2024年7月2日火曜日

科学論文の書き方、#1。節内部、段落内部での「最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」の実践

科学論文の節構成や、結論となる図の重要性についての記事はいくらでもあります。本記事ではそこから一歩踏み込み、節や段落の内部での文章の書き方についてアドバイスします。

私からのアドバイスは、最初に結論(枠組み、詳細に説明する範囲)を伝え、次に詳細を伝える」、この情報伝達の原則を、節内や段落内でも実践することです。これは頻出構文の紹介ではなく、執筆方法の原理の紹介です。

本記事は全4節で構成されます。第1節では、最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」ことの具体例を示します。第2節では、「文章に疑問を持たせない書き方」の意義を示します。第3節では、「科学論文の書き方」の記事の現状を記します。第4節では、私が昔に最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」ことを実践して執筆した論文を紹介します。


1. 節内や段落内での実践。具体的には?

1.1 段落内での実践

最初に、一つの具体例を紹介します。

  1. 正解「結論はAです。理由は三点あります。第一はBです。第二はCです。そして第三はDです。」
  2. 半正解「結論はAです。理由は、BとCとDです。」
  3. 不正解「BとCとDから、Aが結論です。」

これらの正解、半正解、不正解の理由を説明します。1は、論文あるいは報告書として正しいスタイルです。ここでの「正しいスタイル」とは、先に挙げたように最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」ということです。1では結論を示し、理由の範囲(個数)を示し、最後に理由を詳細に説明しています。

2では、後半の理由を述べている文が1に比べて短文です。こちらのスタイルを好む人もいるでしょう。しかし科学論文を構成する文としては不適切です。1と異なり、理由の個数を最初に提示していないからです。ここでは簡単に「B, C, D」としましたが、これら3つの理由が「○○が▲▲である」のような文(長文)であることもありえます。この場合、Bの説明が終わり、Cの説明が始まる段階でおそらく読者は「理由は残りいくつあるのか?」という疑問を持つでしょう。科学論文においては、読者に、文章について疑問を持たせてはいけません。

3は原則とは逆に、詳細な理由から説明しています。これは私たちが会話文で多用するスタイルです。このスタイルは科学論文では完全に不適切です。科学論文や報告書の執筆初心者は、執筆に慣れないうちはどうしてもこのような不適切な科学論文を書いてしまいます。その理由は、論文執筆者が、自分たちが慣れている会話文での情報の伝え方を頼りにしてしまうからです。

1.2 節全体での実践

上記の具体例は段落内での文章に相当します。いくつかの段落で構成される節全体でも、同じ原則を実践します。つまり節の最初の段落で続く段落についての範囲、見通しを紹介します。結果や議論の節が分かりやすいでしょう。その冒頭で、その節で記述する範囲(この場合は示される結果、議論の内容)について紹介します。データ紹介や数値計算手法紹介の節なら、装置や数値計算手法とそれらの原論文を最初に示し、続いてデータの取得日時や高指数・計算時間などの詳細に進むべきでしょう。

私は天体物理系、地球物理系の論文くらいしか知りませんが、イントロダクションの最後で、「第2節では、、、。第3節では、、、。」と紹介するスタイルは、間違いなく読者に「論文の範囲を伝え、後で詳細に説明する」ことを実践しています。


2. 科学論文で望まれる「文章に疑問を持たせない書き方」

科学論文において、その内容についてではなく、情報を伝える媒体である文章について疑問を持たせてはいけません。文章に疑問を持つということは、情報(論文の内容)がスムーズに得られないことを意味します。これは、読者である、多忙でエネルギー不足になりがちな研究者にストレスを与え、論文を読みたいという意欲を削いでしまいます。

科学論文の目的は科学的成果を伝えることです。伝えた結果、読者である研究者がその結果から新たに「仮説と検証」のプロセスを実践します。一般的な科学研究は失敗の量で成果の量と質が決まります。また優秀であるほど研究者は多忙になってしまいます。よって研究者は、自身と読者の研究時間を極力尊重すべきです。そのために、科学論文においては文章自体に疑問を持たせてはいけません。そしてその具体的な方法は、科学論文の至る所での最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」ことの実践です。


3. 「科学論文の書き方」の現状

現在、日本の科学論文の執筆教育の根幹は、「頑張って多くの論文を読んで論文のスタイルに慣れよう」、というものです。この教育方法は、節内や段落内での最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」ことの実践によって大きく改善することができます。

2024年6月末、「科学論文の書き方」をキーワードとして検索すると、出てくる記事の内容は、節構成(イントロ、データ、結論、議論)の紹介と、図表の重要性の強調、図の書き方の説明が一般的です。

Q. 「そんなこたぁ分かってんだよ!知りたいのはその先、科学的成果があって、節構成があって図表があって、それでどんな文章を書いたら論文がエディターチェックを通るの?アクセプトされるの?」

A. 「英語論文をたくさん読めば書けるようになるよ!」

答えになってねー。普遍の法則を見出して知識体系を構築する科学者からの回答が、こんな力業でええんか?

(日本人)研究者の英語科学論文執筆の現状は、全く良くない状況です。そこで今回の節内や段落内での最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」ことの実践が、多くの科学者研究者および大学院生に役立つことを願います。


4.科学論文執筆についての筆者の業績

さて、ここまでの内容の適切不適切とは別に、御高説を垂れてきた私は読者の信頼を得るに足るでしょうか?(本当は私への信頼なんて不要で、内容・技術が適切であり、読者がそれを理解できるならばそれで良い)

The area asymmetry in bipolar magnetic fields, T. T. Yamamoto, A&A 539, A13 (2012)

上記論文は、科学的結論も英文執筆もレフリーとのやり取りも完全に独力で遂行した私の論文です。(なんで一般家庭からフルテキストが読めるんだ?オープンにしたっけ?)

私が博士号を取得した20年近く前、日本語博士論文はなんとか書くことができましたが、博士論文の内容を独力で英語論文にする能力はありませんでした。「一人前の研究者」はもちろん論文執筆もできて当たり前と考えていましたので、当時からいつか独力で英語論文を執筆したいと考えていました。そこで執筆したのがこの論文です。

その当時、「結論を書いてから詳細」を節内部や段落内部でも心がけていたのはよく覚えています。なぜそれを心がけたのかは覚えていません。ただこの論文の執筆によって、英語論文執筆は私の中で「困難な作業」から「普通の作業」に格下げされました。この論文のあと、共同論文の筆頭著者として二本の論文を書きましたが、英語執筆で無茶苦茶詰まった覚えはありません。

この論文、レフリーが意味不明で最終的にエディター兼レフリーになった記憶があります。subumitとacceptの日付で1年半強。孤独でもよく頑張りました、私。なお脱字はありますし、最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」ことを徹底する余地もあります。


今回の記事も最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルで執筆しました。4を除いて。プレゼン手法によくある「最後に結論を再度伝える」の部分は、今回は意図的に省略しています。これは、プレゼン全体、論文全体でも最後の「まとめ」で結論を伝えることを私が当然視しているからです。途中の節の内部や段落内部で結論を再度伝えることは、強調のし過ぎと考えました。


科学論文の書き方、#2。文は、主語を短く、その後を長く。

科学論文の書き方、#3。英語と日本語と情報伝達方法の普遍性。

2018年12月10日月曜日

研究目的と道具の発明改良、と例え。


以前の記事『「実学」と「虚学」は、廃語になるべきである』では、実学と虚学という区分を批判し、その原因と推測される、日本国民の研究の区分への無理解について書きました。

この記事では、基礎科学、応用科学、そして工学の研究目的と道具の発明改良との関係を考えます。

加えて、しっくりくるような例えを考えてみます。



記事の内容


  • 段階ごとの研究目的と道具の発明改良
  • 改良の長い道のりとその先は?
  • うまい例えは?




2018年12月6日木曜日

学術研究の意義 #4 【学術の在り方について】【学術の推進体制について】


1.学術研究の意義(文部科学省、学術分科会、H21~)

学術の基本問題に関する特別委員会(第1回) 議事録(平成21年3月5日(木曜日) 10時~12時)

学術の基本問題に関する特別委員会(第4回) 議事録(平成21年5月28日(木曜日) 14時~17時)

学術の基本問題に関する特別委員会(第5回) 議事録(平成21年6月11日(木曜日) 15時~17時)




学術研究の意義 #3 【学術と社会の関わり方】 【新しい学問の発展、新しい研究領域の発展】


1.学術研究の意義(文部科学省、学術分科会、H21~)

学術の基本問題に関する特別委員会(第2回) 議事録(平成21年3月31日(火曜日) 14時~16時)

学術の基本問題に関する特別委員会(第5回) 議事録(平成21年6月11日(木曜日) 15時~17時)


学術研究の意義 #2 【認識科学と設計科学】 【基礎研究と応用研究】


1.学術研究の意義(文部科学省、学術分科会、H21?22?)

学術の基本問題に関する特別委員会(第2回) 議事録(平成21年3月31日(火曜日) 14時~16時)



学術研究の意義 #1 【学術の役割について】


1.学術研究の意義(文部科学省、学術分科会、H21?22?)

学術の基本問題に関する特別委員会(第1回) 議事録

この記事では「学術研究の意義」冒頭の【学術の役割について】を取り上げます。

各節は、必ずしもある回の意見だけで構成されている訳ではありません。


学術研究の意義 #0 一連の記事について


以下の一連の記事では、以下の要約された文章についてコメントをつけます。

1.学術研究の意義(文部科学省、学術分科会、H21)


この文章は、文部科学省の「学術の基本問題に関する特別委員会」で出されたコメントを要約したものです。

平成21年3月に第1回会合が開催され、平成22年5月に最後の第8回会合が開催されました。

学術の基本問題に関する特別委員会(第1回) 議事録


この記事では、コメント付けについての私の姿勢と注意点を述べます。


2018年12月3日月曜日

一般の人々に知ってほしい論文の重要性、繰り返さない!

前記事「知識体系を構築するのは論文か議論か?論文と議論の情報量の差」では、研究志望者向けに、知識体系の構築における論文の持つ情報量の重要性を述べました。

この記事では、一般の人々に向け、「同じ事を繰り返さないための、皆が閲覧できる記録としての論文」の重要性を述べ、執筆の大変さを愚痴ります。

同じことを繰り返さず、未知領域を開拓する、これが研究を効率的に進めるために大事な事です。

(個々の内容は、分野によっては異なるかもしれません)



新人研究者「この前学会発表したんやで」
一般人友人「おお、すごいやん」パチパチ

新人研究者「この前論文出したんやで」
一般人友人「ほーん、で?」ハナホジー

なぜなのか?(´・ω・`)



本記事の内容

  • 一般人と研究者の論文認識
  • 論文執筆の困難
  • 論文投稿過程の困難
  • 参照記事



2018年11月16日金曜日

「実学」と「虚学」は、廃語になるべきである


実学(Wikipedia)

2018/11/15のページ。他言語ページへのリンクは無い。


記事の内容

  • 実学と虚学の区分から得られるモノは?
  • 段階ごとの研究目的
  • 未来は不明
  • 人類の資産としての基礎科学の研究成果
  • 外国では?
  • 政府による選択と集中
  • 日本の科学者の取るべき行動は?
  • 追記、科学技術基本計画


項目書き出したら長いな。分割するかも。


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