1.学術研究の意義(文部科学省、学術分科会、H21~)
学術の基本問題に関する特別委員会(第1回) 議事録(平成21年3月5日(木曜日) 10時~12時)
学術の基本問題に関する特別委員会(第4回) 議事録(平成21年5月28日(木曜日) 14時~17時)
学術の基本問題に関する特別委員会(第5回) 議事録(平成21年6月11日(木曜日) 15時~17時)
【学術の在り方について】
> ○ 学術の意義を述べるときに、アカデミアの論理だけを並べていいものか。社会の構成員の視点から、学術は大切で、自分の子どもたちも学術に対する尊敬の念を持って学びたいと思っていくように、結果的に小学校から大学まで段階を上がって学んでいくように、そういう社会になるように、といった捉え方で説明する必要もあるのではないか。【第5回】
現代生活が学術(基礎研究)の成果にどれだけ支えられているか、そこをずっと以前からアピールするべきだったのでは。
> ○ 好奇心というのは存在すること自体に意義がある、というのがアインシュタインの言葉だが、これがサイエンスの根幹にある。好奇心こそが無から有を生み出す基盤になっている。新しい技術革新や社会の文化力の創造の根幹にはこれがある。これを中心に据えた上で、いかに社会に貢献するか、社会に理解してもらうかというパブリシティーの問題が非常に重要となる。そして、人文社会科学系、理工系それらすべてを統合して学問の在り方を考えていくことが重要であり、このことが、国際標準ということを基準とした日本のこれからの学問の在り方を標榜していくために重要ではないか。【第1回】
【新しい学問の発展、新しい研究領域の発展】で好奇心について語られてていた事と非常に異なり、私にはこれが研究者のあるべきスタンスに思える。
> ○ 学術は、英語で言えば、おそらく、LiberalArts&Sciencesにあたる。【第1回】
> ○ 学術の本質論が必要ではないか。日本の場合、概念が、行政用語でわかれていることで、組織や予算の区分が生まれているのではないか。この点を徹底的に議論して、中長期的な構造的変革につながるものをまとめられればいいのではないか。【第1回】
科学技術に対する認識もそうだが、日本の学術が、自分たちで獲得したものでなく、与えられたものを発展させてきたという事がよく分かる意見。
日本人は、学術(科学技術)を自分たちになじませる必要がある。
日本人は、なぜ学術を発展させる必要があるのか、それがどう自分たちの利益になるのか、について認識を改め、学術というシステムに自分たちを適応させる必要がある。
現代日本での学術の名称・用語がどうであれ、人類は2000年以上前から自然現象の研究を続け、成果を応用し、道具を発展させ、個人として集団として空間的時間的な生存圏を広げてきた。
日本人は人類の財産であるこの学術システムの恩恵を受けているが、日本人はこの学術システムにどう寄与するのか?
実用レベルの工業製品を発明、研鑽し、経済的な取引だけを重視すればよいのか?
そうやって稼いだ資金をどこかの研究所に寄付するだけで良いのだろうか?
現在の、学術に対する歪んだ認識はそのままで?
海外の研究者達が「よく分からない事を言っている」のに、お金にならない基礎研究に十分な研究資金を提供できるだろうか?
極端な将来像では、日本人が人類の寄生虫扱いされる恐れはないだろうか?
> ○ 日本国内だけで日本の人だけで研究を進めたり、あるいはカッティング・エッジだけを追い詰めていくだけで学術が本当に向上するのか疑問である。【第1回】
普遍的な自然法則が日本人だけを差別するとは思えないが、日本人はそんなに特殊なのか?
他の地域の人々と日本人との間に研究分野の嗜好の差があるかもしれないが、かといって、ある地域の人々が学術にとって完全に適切とも思えない。
この意見は、自分たちに何が出来ていないのか、何が足りないのか、認識できていないだけでは?
「カッティング・エッジ(最先端)」を「当たり前」に変えていく事が、学術と産業の発展そのもの、人類の生存活動そのものである。
> ○ 学問の発展について考えるときに、寛容性、価値観の多様性という考え方を復権していかないと、我が国の学術に大きな影を落としていくことになる。【第4回】
人間の価値観では計りきれない、この世界(物質的な事と人類の情報処理活動)の奥深さも考慮して欲しい。
> ○ 学術分野は2つに分けざるをえない。1つは、産業論理に委ねてはならない領域。これは国が何としても支えていかなければならない領域である。もう1つは産業論理と学術論理の両輪が回るべき領域である。【第4回】
> ○ 産業論理と学術論理との両輪で進めなければならない学術領域は、「教育」、「研究」、「イノベーション」(「社会貢献」)という大学の持っている3つの使命を三位一体的に進める必要がある。また、それを促進する施策や、施策の評価基準なり成果の評価基準なりをもっと明確にすべき。【第4回】
会議にふさわしい意見だとは思う。
この現象はこうだ、我々はここではこうすべきだ、も良いのだが、やはりより大きな絵、いくつもの現象を包含する筋の通った理論、より原則的な観点、そういうモノから一貫した行動が取れるようにしたい。
『「イノベーション」(「社会貢献」)』という認識だが、英語での原義以外に、任意に意味を付与するのは混乱の元である。(議事録を見ると、発言者本人に迷いがあるのは分かる)
研究とイノベーション(革新、刷新)を別に分ける意味はあるのか?
現実には、研究を進めるうちに、いつのまにかイノベーション(革新、刷新)が発生しているはずなのに、イノベーションがあたかもコントロール可能と認識しているのか?
> ○ これから人口が減少して研究の担い手が減っていく中で、30年後の学術研究の在り方をどうするのか、研究者が減ってもなおすべての学問領域をカバーするのかという点について、議論が必要ではないか。【第5回】
議論するなら、それは「選択と集中」の議論になるのだろうが、基礎研究については、未来が読めないのにどこかの分野を選択する理由が見当たらない。
研究は研究者の「この分野が面白そう、発展しそう」という知的好奇心と名誉欲?が原動力である。
研究者に任せるのが最も効率が良いと思う。
門外漢(政府官僚)がしゃしゃり出たところで、時間と資金の効率が悪くなるだけであろう。
> ○ ここ数年、日本の学術力が他の主要国と比べて質量ともに長期低落下傾向にあるのではないか。【第1回】
> ○ 学術水準が長期低落傾向、と記述してある点について疑問がある。トップを見て議論をするのか、裾野について議論するのかで大きく対応が変わる。学術のリーダシップがとれていないという意味ではなく、教育研究システムが崩れるということを考えるなら別の捉え方が必要となる。【第5回】
> ○ 論文のシェアは相対的なものであり、他国と比べてどうかという評価をすべき。論文のシェアは競争という面があり、シェアが低下しても、我が国の学術の「水準」が低下したかどうかは分からない。【第5回】
論文数などについては、文部科学省科学技術・学術政策研究所のサイエンスマップや科学技術指標をどうぞ。
科学技術指標2018の概要のP8を見ると、自然科学系論文について、1994-96、2004-06、2014-16の各国の論文数、シェア、順位が掲載されている。
この20年間で、日本の論文数は微減、しかし諸外国の論文数は増加、従って「研究の量」は相対的には長期低落傾向にある。
研究の質については、論文を執筆している年齢層がこの20年で大きく変わっていて、現在では、大学教員などの経験豊かな比較的年配の研究者は研究時間・論文執筆時間を工面できず、ポスドクや大学院生が論文執筆の主力のはず。
そうなると、「論文の質」自体が下がるのは当然である。
それを証明するように、全体の論文数のシェア以上に、トップ1%10%の論文数のシェアが下がっている。
従って、量にしろ質にしろ、日本の自然科学系研究(~学術?)は国際水準に遅れをとっている、が事実と言える。
議事録の意見は10年近く前のものであるが、当時の恐れは現在顕在化している。
【学術の推進体制について】
> ○ 日本全体の長期的ビジョン、学術や科学技術、あるいは大学の在り方など、全体をどこが見ているのか、そういうことが全くないのは問題である。【第1回】
「在り方がこうでなければならない」とか、「全体をどこかが見なければならない」とか、一歩間違えると硬直化し、変化に対応できなくなりそう。
この問題意識が強迫観念に起源を持たないなら、具体的にどのような問題点があって、人的金銭的な被害が発生しそうなのか、その程度の内容は述べて欲しい。
ただ「問題である」では議論にならないし、忙しい人達を集めた会議にふさわしいコメントとは言えない。
> ○ 基本問題委員会で議論されたことが、科学技術・学術審議会と総合科学技術会議等が一緒になって概算要求するところにある程度反映されるような仕組みを考えること、また、科学技術基本計画の中にこの分科会で議論されることがいかに反映されていくかということを視点に入れて議論を進めていくことが重要。【第1回】
財務省と文部省が大学を食い物にしよとしている現状を見れば、何も反映されなかったのだろう。
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