2024年7月23日火曜日

経済学物理学クイズ、水路に流入した水は何回転したか?

以下、クイズの概要を述べ、次に細かい設定を述べます。

水路についての数量A、B、Cが与えられます。このABCを使って、水源(蛇口)から水路に流入した水が水路を何回循環し、水路から流出するのか、概算できる二つの式を与えます。どちらの概算が適切か、選択してください。

広大な水路(ブラックボックス)+水源+貯水池+水源と貯水池の間の水路。
  • 一定期間、水源(蛇口)から流れ出た水量はA。(ある断面で測定。A>0)
  • 一定期間、水源と貯水池の間の水路を流れる水量はB。(ある断面で測定。B>0)
  • これまでの全期間において、水路から貯水池へと流れた水量はC。
  • 簡単のために定常状態。水量A、Bは時間的に変化しない。
  • 広大な水路(ブラックボックス)は閉じている。

選択肢である概算式。

概算式その一、(A+B)/A。    

概算式その二、(A+B)/C。

「循環の回数を求めるのに、概算式その二なんかありえんやろ」と思った科学者技術者あるいはその卵かもしれないアナタm9(・ω・)!第3節「本問題の意味」へどうぞ。



内容

  1. 問題設定詳細
  2. 選択肢(概算式)
  3. 本問題の意味



問題設定詳細

循環回数の概算をしたいので物理学っぽい感じで記述しています。理想的な状況を考えています。好意的に解釈してください。

  • その水路は皆が利用しています。しかし水路はとても広大なため、一人がその全貌を把握することは困難です。そのためにブラックボックスとなっています。
  • 水源と貯水池の間の区間は、水路が収束しています。この区間は、水路全体の長さに対して十分短い区間です。この区間の上流では一定量の水が貯水池に流れ出ています。その下流では一定量の水が水源から流れ込んでいます。簡単のために、この両者の水量は同量、時間的に変化しない、と仮定します。
  • この水路では、一か月に一度、水が循環しています。回転速度、循環速度は1回転/月となります。(この設定はここでは不要なのですが、現実の経済を考えるときに必要となります)
  • 水路から水があふれることはありません。水源からは水が無限に湧き出し、貯水池の容量は無限大です。
  • 水源と貯水池以外に発散・吸収の要素は存在しません。

この流入量と流出量、および貯水池で計測された水量が与えられます。

  • 水源から一定期間に流れ出た水量A。
  • 収束水路を一定期間に流れる水量B。
  • 貯水池の水量C。


選択肢(概算式)

概算式1、(A+B)/A

概算式2、(A+B)/C

両者の式では、分子がA+Bで共通しています。水源から水路に流入した水量がAで、貯水池と水源の間で計測された水量がBなので、広大な水路のどこかに適切な断面を設定すれば、A+Bの水量が計測されます。

問題は分母です。概算式1では、分母にAをとり、水路を流れている水量A+BがAの何倍であるかを計算しています。これは言い換えると、流入した水量Aがどの程度の期間(循環回数)、水路にとどまるのかを計算しています。概算式1は、水路を何回転すれば水路から貯水池に流れ出るかを計算しています。

流体で考えることが不慣れならば、例えば粒子的に、それもごく単純にAをボール1個、Bをボール2個とでも考えてください。

概算式2では、貯水池に貯まった水量Cを分母としています。Cは時間経過により増加するので、この概算式では、AとBが一定でも、時間が経過するほどに、得られる値は小さくなります。これでは、水源からの水量Aが水路を何回転しているかは計算できません。計算に不適切なこの概算式を出した理由は、経済学における貨幣の循環速度がこの計算方法を採用しているからです。


本問題の意味

今回のクイズは、経済学の貨幣の循環速度の導出方法を、流体的に置き換えたものです。今回のA+Bは、経済学のY=C+G+I=C+T+Sを置き換えたものです。もっといえば、A=G+I、B=Cと置き換えています。(今回採用したCと経済学のCが混ざってていすいません。)

これまでの記事で私が提案している計算方法は概算式1、経済学で採用している計算方法は概算式2です。完全に概算式2とイコールではないのですが、概算式1でないことは確かです。「私が採用している」と書きましたが、この概算は科学者技術者が普通に採用するであろう見積もりです。この記事で主張したいことは、以下の二点です。

  1. こんなおかしな見積もりをする学問が経済学と呼ばれている。
  2. 経済学を基盤とする経済政策によって、特に日本において国民生活は脅かされ続け、科学技術の発展は阻害されている。

この短い記事で、経済学のもろもろの拙さを詳細には書けません。概算式2として示した経済学の貨幣の循環速度の導出についても、科学者技術者の皆さんは「そんなおかしな見積もりをする定量的な学問が存在するわけないだろ、いい加減にしろ!(ドンッ)」と思われるかもしれません。しかし残念ながらこれは現実です。この貨幣循環についてのおかしな計算方法が100年も議論され続けていることを、科学者技術者のみなさんは信じられますか?

私が科学者技術者のみなさんにお勧めすることは、一か月、なんとか時間を作って学部生向けの経済学の教科書を読んでください。一年間、例えばなぜ「Y=C+G+I=C+T+S」で経済規模が測定できるのか、考えてください。「物質的に豊かになる」とは、定量的に何を意味するのか、どう測定するのか、考えてみてください。研究の出発点になりえる仮説の材料は多くありません。参考までに、既存の経済学の知識の範囲で私はこう考えました

(経済学の教科書にはいろいろなトピックが挙げられていますが、それらが統一されたものの見方、一つの仮説によって統一的に記述されているわけではありません。私にはミクロ経済学の原理(需要と供給の均衡)でマクロ経済学の現象(貨幣循環)を説明しようとして、失敗し続けているように見えます。)

日本人の科学者技術者が1年間まじめに研究すれば、それで終了です。今の経済学よりもずっとましな科学的経済学の基盤はできました。お疲れさまでした。「失われた30年間」は再来しません。科研費や企業研究費も増えて研究し放題、とはいきませんが再び日本は先進諸国として、科学技術をけん引することができるでしょう。

この期待される経済学の変化は、かつて科学がもたらした変化同様、不可逆的な認識の変化です。天動説から地動説への変化です。それと同じように、我々は、科学技術による不可逆的な認識の変化を経済と経済学にもたらすことができます。そして、我々の生活は「致命的に」良くなるでしょう。かつての科学による認識の変化同様、ある種の権力者達にとっては文字通り致命的です。

経済、つまり人類による商業活動も自然現象の範疇です。経済学で起きていることは、何一つ、宇宙の法則を乱してはいません(とりあえずそう仮定してみましょう)。それとも「経済は複雑だから科学的に研究することは難しい」なんて数学的証明を、みなさんどこかで見かけましたか?

およそ100年前に量子力学が形成されたように、現在が科学的経済学が形成される時期でもおかしくありません。データサイエンスやAIも面白いです。研究を楽しんでください!


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