2022年11月22日火曜日

【貨幣循環】貨幣循環速度Vの成長率

この記事の主題は、貨幣の循環速度Vと政府支出Gの平均成長率の関係である。以下の図は、33カ国20年間の平均値の分布。政府支出の平均成長率の範囲が2%から10%、そして循環速度Vの平均成長率の範囲はほぼ1%以下(2%超が一例)である。過去20年間において、「循環速度Vの成長率は、政府支出Gの成長率より小さい」という結果が得られた。

各国の政府支出の成長率の平均値(横軸)と貨幣循環速度の成長率の平均値(縦軸)。

データはOECDから取得した33カ国、20年間の平均値。ここでは世界規模の経済的な事件となった2009年と2020年を除外している。

このグラフで記事を書く理由は、「【貨幣循環】政府支出Gの成長率と名目GDPの成長率の関係(Y、M、Vの各変化率の関係)」において紹介した、政府支出と名目GDPの成長率の正比例関係を説明するためである。先の記事ではこの正比例関係の説明として、貨幣循環のもとでの循環速度の成長率が0で、政府支出と国内投資の成長率が同程度ならこの正比例関係を説明できる事を示した。今回のグラフは、循環速度の成長率が0とはいかないまでも、循環速度の成長率が政府支出の成長率に対して小さい事を示している。


内容

1. データ



2022年11月17日木曜日

【貨幣循環】財・サービスの数量の概算

現在我々が1年間に消費している財・サービスの数量は、平均物価を100円から1000円と仮定して、およそ4000から40000程度である。1年を365日、さらに400日と大雑把にすれば、1日に消費あるいは購入している財・サービスの数量は10から100程度となる。この数字の導出を説明する。


内容。

  1. 数量計算の意義
  2. 拡張された数量方程式
  3. 財・サービスの数量の試算

2022年11月11日金曜日

【貨幣循環】直接給付金による C+G+I と PQ の不一致

この記事の結論として、貨幣循環の流体的描像のもとでは、直接給付金によって「PQ < C+G+I」が導かれる。国内総生産としては、G から直接給付金の予算を引いた値を G' として、Y=C+G'+I=PQ を採用すべきだろう。


貨幣循環の流体的描像。Aに財・サービス市場が位置し、Bに家計が位置する。CとDは政府と金融市場である。

2022年11月3日木曜日

【貨幣循環】名目GDPの増減と経済格差の増減の分離 その1

この記事の結論は、「名目GDP(政府支出)の増減と経済格差の増減は切り分けましょう」、です。経済成長の議論ではしばしば「パイの大きさ」と「パイの切り方」の例えが使われますが、それは数式上で明確に分離できます。M=G+Iがパイの大きさであり、平均消費性向βの分布(所得分布)がパイの切り方です。

政府支出を増やして名目GDPが増加すれば自動的に経済格差が縮小するわけではなく、経済格差が縮小すれば名目GDPが必ず増加する訳ではありません。貨幣循環の描像からは、名目GDPの増減は貨幣流の総量の問題であり、経済格差の増減は貨幣流の配分の問題です。

この記事で扱う「名目GDPの増減と経済格差の増減の分離」を明確にすると、以下の表のように、国の発展(人口と財・サービスの増加)のために、政府支出と平均消費性向βの分布および所得分布がどのように作用するかを議論する事ができます。

この表については、次の記事で議論します。

「名目GDPの増減と経済格差の増減の分離」の根拠は、次の2つの方程式です。

  • M=G+I
  • V=Y/(G+I)=1/(1-β)

この数式の導出については、「【貨幣循環】貨幣循環導入の3点セット」を御覧ください。数量方程式のMをM=G+Iとおくと、貨幣循環のもとで循環フロー図とGDPの定義を関係づけられます。


内容

  1. 動機
  2. βの平均値とβの分布

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