2022年11月11日金曜日

【貨幣循環】直接給付金による C+G+I と PQ の不一致

この記事の結論として、貨幣循環の流体的描像のもとでは、直接給付金によって「PQ < C+G+I」が導かれる。国内総生産としては、G から直接給付金の予算を引いた値を G' として、Y=C+G'+I=PQ を採用すべきだろう。


貨幣循環の流体的描像。Aに財・サービス市場が位置し、Bに家計が位置する。CとDは政府と金融市場である。



1. 貨幣循環の流体的描像と直接給付金

貨幣循環が成立している場合、Y=C+G+I=C+T+S である。そして財・サービス市場に注目すると C+G+I=PQ である。この事は、「【貨幣循環】貨幣循環導入の3点セット」で示したように、循環フロー図中に Y=C+G+I=C+T+S の貨幣流量を測定する断面によって明確になる。さらに、「【貨幣循環】流体的貨幣循環と直接給付とインフレターゲット」で示したように、貨幣循環を流れるプールのように流体的に考えると理解しやすい。

この流体的な描写によると、直接給付金が PQ=C+G+I の関係を壊してしまう事が導かれる。その理由は、直接給付金が政府支出でありながら、財・サービス市場を経由せずに家計に直接支給されるからである。

これは例えば、流れるプールに流れ込む水の一部を、ホースによって家計の位置に直接流し込むようなものである。この時、家計の位置から流れ出る水量は以前と変わらないが、財・サービス市場の位置に流れ込む水量は減少する。従って、いわゆるGDPの生産面と支出面の等号は破綻する。

より正確には、支出面のGDPが生産面のGDPより大きくなる。言葉を変えると、定義どおりの生産面のGDP(C+G+I)が、市場で計測されるGDP(PQ)より大きくなる。


2. 本来想定されている政府支出

Y=C+G+I の G とは、本来「財・サービス市場に流れ込む政府支出」である。この予算には、公務員の人件費と公共事業費用が含まれる。財・サービス市場に流れ込まない直接給付金の予算は、GDPの計算に組み込むべきではない。組み込んでしまえば、帳簿上は Y=C+G+I=C+T+S は成立するが、C+G+I は Y=PQ とは一致しない。G から直接給付金の予算を引いた値を G' とすると、C+G'+I=PQ である。

国内総生産というくらいなのだから、その値として Y=C+G'+I=PQ を採用すべきだろう。そして、C+G'+I < C+G+I=C+T+S である。

なお直接給付金と同様の、財・サービス市場を通過しない、政府から家計への直接的な政府支出は、同じ効果を持つ。


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20221211、「直接給付金による Y=C+G+I=C+T+S の破綻」から「直接給付金による C+G+I と PQ の不一致」にタイトル変更。および文章を修正。

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