2018年11月2日金曜日

財政制度分科会(平成30年10月24日開催)の資料、科学技術(2)について





今回は、 「論点6 科学技術(2)<国立大学法人の質の向上>」についての感想、疑問点を述べます。

この財務省の資料を資料1とし、比較用の資料2として、「国立大学法人の現状と今後の運営費交付金の在り方について」を使います。

この資料は、一般社団法人国立大学協会の作成、「第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会(第1回)」という会合で使われたものです。

他に適切な資料があるかもしれませんが、とりあえず検索で引っかかったものを。






資料1の64ページ

要旨そのまま

  1. 国⽴⼤学法⼈運営費交付⾦が国⽴⼤学法⼈化以降、約1,400億円減少したとの指摘がある。しかしながら、 運営費交付⾦については、 附属病院の⾚字解消(▲584億円)、退職⼿当の減(▲453億円) という特殊要因を除くと、▲408億円(▲3.8%)の減に留まる。
  2. ⼀⽅、補助⾦等は約1,000億円増加している。 
  3. したがって、国⽴⼤学に対する公的⽀援は約600億円増加している。


ここのグラフは、平成16年の数字を挙げて、その比較に29年、30年の数字を挙げています。

ここだけを見ると増加していますが、資料2の12ページを見ると、平成16年以降、運営費交付金が1%程度単調減少している事が分かります。(競争的資金さえも減少)

それでいて平成29年の数値だけを挙げるのは、「これまでも増加してたんですよ」と言わんばかりに、できの良い所だけを見せいているようです。

また運営費交付金の「予算額」を見せておいて、30年の補助金については「決算データ無し」というのも、なんだかなぁと思います。



資料1の65、66ページ



  • 65ページの要旨、「海外の大学は政府からの資金援助の割合は低いぞ、しっかりしろ」
  • 66ページの要旨、「日本の学生は、政府からの資金援助が豊富で、恵まれてますよ。(減らせますよ)」


為替を考えると、オックスフォード、ケンブリッジ、バークレーの収入総額が東大と同額程度でしょうか、スタンフォードは東大の3倍程度ですね。

資料2の13ページ以降が対応していそうですが、日本の大学の収支は、附属病院に関するものがかなりの割合を占めます。

この日本の大学の収入割合は、海外とそのまま比較してOKでしょうか?

まともな意見としては、例えばオックスフォードのように「研究受託収入を増やそう」となるんでしょうが、ケンブリッジの「その他」(何これ?)とか、オックスフォードの株式運用とか、バークレーの学費とか、それぞれに強みがあるも、「これが正しい」とは言え無さそうです。

もちろん「日本の大学も強みを持て」というのは理解できますが、これらの大学の運営の歴史と独立行政法人になった日本の国立大学の歴史は比較にならず、明日からこうしようとは行きません。

(企業のための人材育成しろとか、今のニーズに合った研究をしろとか、大学を企業の下請け程度にしか思っていない日本企業と、海外の企業大学と同じような関係は無理に思いますが、どうなんでしょうね。)


それにしても、英米の大学は学費収入の割合が高いですね。

google検索で、例えば「東京大学 在籍者数」とするとその人数が分かります。

東大は28000、ケンブリッジ22000、オックスフォード24000、スタンフォード17000、バークレー42000、です(2015年から17年)。

1人あたりの学費は東大(日本の国立大)の2~3倍となります。(スタンフォードは4.5倍?)

資料1の66ページでは、「日本の学生への公的支援は高額」とありますが、注意書きにある科研費をここに含めるのはどうなんでしょう?他の国についても、「研究に関する競争的資金」を「学生への公的支援」に含めているなら公平かもしれませんが、項目としては違和感を感じます。

アメリカでは院生に生活可能な額の給与が出ます(競争的資金から)が、日本の学生院生のTARAなどでは、出たとしても、せいぜい食費程度でしょう。この辺の感覚の違いが違和感なのかと思いますが。



67ページの随契云々はわからないので放置。



68ページ


要旨
 国⽴⼤学の40歳未満の教員のポストが減少しているとの指摘があるが、
① ⼊学者が減少している中で、常勤教員数を増加させていること、
② 教員の雇⽤や任期の判断が効果的になされてこなかったこと、
③ 定年延⻑をしてきたこと、
④ 65歳以上の教員を増加させてきたこと、シニアの採⽤を増やしてきたこと、
などを鑑みれば、国⽴⼤学⾃⾝において、40歳未満の教員の処遇を改善させる余地があったのではないか。

大学関係なく、社会的に起きている労働者の高齢化という現象は、年金の支給年齢を引き上げた政治家と官僚の責任(失敗)でしょう。

人口の変動と年金の支給を適切にコントロールするのは、近代国家の本来の仕事です(できてない国のほうが多いと思うが)。

政府のコアである財務省が、このように定年延長と教員の高年齢化を大学の責任に押し付けるのは看過できません。(失敗したのはあなた達ですよ、財務省の皆さん)

資料1の①の常勤職員数の増加というのは本当でしょうか?

資料2の18ページには、真逆の、人件費の減少、常勤ポストの減少、若手の採用割合の減少が述べられています。

この資料2の記述は、大学での、人件費削減に伴って退職した教員のポストをすぐに埋められずにそれがズルズル行っている状況そのものです。

資料1の「常勤職員数の増加」がどこの資料から来てるのか調べきれませんでしたが、とても気になります。

これはどちらかが虚偽の案件では?



69ページ


要旨
① 国⽴⼤学の教員の「個⼈研究費」が⼤きく減少しているとの指摘がある。
② しかしながら、基盤的研究経費だけを⾒ても⼤きく減少しているわけではないが、学内でどのように配分・執⾏されているのか明らかでない。
③ また、外部資⾦も合わせた「教員⼀⼈当たり研究費」は増加している。

いや、どう考えても「研究費の格差」が増大しているのが問題でしょ?

学内での配分がわからないと言っても、おおまかな配分額と人数は把握できるでしょうし、そもそも高額化にしたんでしょ。

「教員⼀⼈当たり研究費」は増加しているでしょうが、「研究する事ができない研究者」も増加しています。




70ページ


要旨
○ ⼤学の研究者個⼈の研究時間割合が減少しているとの指摘がある。
○ しかしながら、 (1) ⽐較している3回のデータのサンプリング⽅法が異なっており、単純に⽐較できないこと (2) 研究者個⼈の研究時間を国全体で⾜し合わせたフルタイム換算(教員数×研究時間割合)の研究者数 で⾒ると、⽇本は、実数でも⼈⼝規模⽐でも主要先進国並みであり、総研究時間が短いわけではないこと に留意が必要。

そりゃポスドクや大学院生のみなさんが、無給あるいは少ない給料でガリガリ研究してるからですよ。

68ページの常勤教員数7万人に対して、ここでの換算研究者数が14万人、加えて大学等におけるフルタイム換算データに関する調査-調査の概要を読むと、常勤教員に加えて研究員大学院生も加味してるのでしょう。(ただどうやって換算したのか分からない。海外の研究時間も同様の計算か?)

大学院生とポスドクは増えて、総研究時間が短くなくとも、優秀だと認められている常勤教員の研究時間は減少しているでしょう。(資料2の19ページ)



71~74ページ、へーそーなのかー

74ページ、平成16年と29年の運営費交付金、各大学の額を見せてるんだけど、ほんと「この間何も変わっていませんよー」という印象を与える。




75ページ


要旨
○ 運営費交付⾦の⼤宗は、各法⼈に対して、原則、前年度同額で配分。
○ 「評価に基づき」配分される経費はごく⼀部。相当なコストをかけて「評価」を⾏っているにもかかわらず、 「量」「質」の両⾯において、我が国の教育研究の質向上に実効性がない。

(「⼤宗」って、何の誤字だろ?)

資料2の24ページ以降、「3.今後の国立大学法人運営費交付金等の在り方」との著しい認識の違い。

おそらく、運営費交付金に「質向上」を求めるのは、水道、国民健康保険、警察、教師を全て営利企業化しますみたいな、そんな感じ。(安定よりも質を向上させましょう、破綻?する訳無いですよ!安全なんですよ!地震も津波も起きませんよ、ハハッ)

財務省の方向性は、運営費交付金についてももっと研究者の評価をはっきりしようという事ですが、財務省や官僚もはっきりと評価されるべきだと思いますよ。



今更まとめますが、近年の研究者をとまく環境はどんどん劣化して、人件費の抑制から研究以外の負担増加、研究時間の減少となり、競争的資金の格差が開いて、運営費交付金が減額されて、諸経費が高騰して(資料2の17ページ)、大学側の努力で施設を整備して(資料2の20ページ以降)、もらった研究費も使途が変に制限されてて使いにくくて(大学事務員もわけわからん自分ルールを押し付けてきたりするし)、などという状況です。

その一方、財務省は今回の資料で、「教員一人当たりの研究費は増えている」、「(院生ポスドクも加味すれば)研究時間は海外と同程度」、などと述べています。

前回の記事でも書きましたが、あまり詳しくないであろう人たちに対して、まぁ酷い資料という印象です。




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