財務省分科会の資料中にあった、サイエンスマップについての感想。
(財務省分科会の資料についての感想、その1、その2)
こういう資料は初めて見たのとたいした事は書けないので、感想だけ。
出典
「サイエンスマップ 2016」, NISTEP REPORT, No. 178, 文部科学省科学技術・学術政策研究所.
DOI: http://doi.org/10.15108/nr178
“Science Map 2016,” NISTEP REPORT, No. 178, National Institute of Science and Technology
Policy, Tokyo.
DOI: http://doi.org/10.15108/nr178
サイエンスマップのURL(PDFのダウンロードなど)は、こちら。
ここから、各年のPDFのダウンロードページ、WEB上でサイエンスマップのパラメータを変えて閲覧できるページに飛びます。
ざっくりSci-GEO チャート
こういう資料は大学にいた時に読んだ事が無かったので、基本的に「へーそーなのかー」というところです。
全般に興味深くありますが、この記事では、特に「概要3」、「本編5」にあたる「 Sci-GEO チャート」について述べます。
本編、図表57。 |
本編、図表58。 |
サイエンスマップは、引用回数のトップ1%論文から作られており、その研究範囲は伝統的な分野から近年の流行分野まで多種多様です。
Sci-GEO チャートは、このサイエンスマップ上の相対的な位置関係を、その継続性と他分野との結びつきの強さによって分類します。
図58の型をざっくり言うと、
- コンチネント型、伝統領域(長きに渡る研究、細かい科目の集合体)。
- ペニンシュラ型、伝統領域近傍の新規開拓領域。
- アイランド型、息の長いスモールアイランド(伝統領域とまではいかない)。
- スモールアイランド型、孤立した新規開拓領域。
となります。
継続性と他分野との結びつきは、だいたい想像がつくかと思います。
新規開拓領域はもちろん、伝統領域でもキーワード(論文)の浮き沈みがあって非常に興味深いのですが(図表65)、ここでは日本と他国の参画領域数の変遷について。
日本と他国の研究領域
図表66。 |
この次の図表67では、2004年の領域分類が記載されています。
2004年と2016年の差異を見ると、中国が急成長しており、日本以外の国の参画領域数は大きく伸びています。
世界の研究者が目を向けている研究領域は、間違いなく広がっています。
ただ日本については、参画領域数の増加幅は小さく、参画領域数の割合は2004年と変わっていません。
一方、他国の参画領域数の割合はスモールアイランド型が増加しています。
このレポートでは、この事について肯定も否定もせず、特にこうするべきとは書いていません。
ただ報道向け資料には「☝ポイント8 Sci-GEOチャートにみる日本の研究領域タイプのバランスは、世界の主要国とは異なっています。この違いはサイエンスマップ 2004 から 2016 の間に顕著となっています。 」とは書いてあります。
私としてはこの割合の是非が非常に気になるところですが、性急な人々は「日本は遅れている。新規開拓研究の割合を増やそう」と考えるかもしれません。
この場合、問題となりそうなのは、以下の2点でしょうか。
- 審査する側(あるいは日本社会)は、新規開拓研究の不発・失敗を許容できるか?(研究者的には失敗というより将来の肥やしだが、ある人々にとっては当初の目的が達成できない場合の資金の無駄)
- 官僚は、研究者の業績と自分たちの業績を分離させられるか?(財務省に対してのアピールをやめられるか)
参画数自体が伸び悩んでいるのは、明らかに運営費交付金の減額、研究費の格差増大が問題な訳ですが、ここが改善されても上記の2点をクリアにしないと、日本が新領域研究の多様性を担えるのか大いに疑問です。
いくつかの新分野ではリーダーシップを取れるかもしれません。
でもその「いくつか」は、おそらく世界全体では小さな割合にとどまり、「他の国と並んで科学的リーダーシップをとる」という状況を実現させるのは難しいのではないでしょうか。
一部の感想のみ書きましたが、サイエンスマップ、面白いですね。
このサイエンスマップ、高校生、研究室を選ぶ前の大学生に紹介できませんかね?(活用済み?)
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