2024年11月21日木曜日

【貨幣循環】に基づいた政府支出の成長率とGDPの成長率の正比例関係の説明 まとめ

本記事では、政府支出の成長率(dG/G)とGDPの成長率(dY/Y)の正比例関係について、貨幣循環の視点での定量的な説明の締めとなります。本記事の後半では、日本とアメリカのGとIの(ほぼ)正比例関係の図を示し、さらにdG/Gに対してのdY/YとdV/V(貨幣循環速度の成長率)の分布を示します。これらの分布によって示される定量的な関係を使うと、「M=G+I、V=1/(1-β)」の関係式から「dY/Y=dG/G」を導くことができます。

以下、本記事の内容です。

  1. dG/GとdY/Yの正比例関係についての、これまでの記事まとめ。
  2. 日本とアメリカのGとIの年変化。
  3. OECDのデータによる、dG/G、dY/Y、dV/Vの関係。
  4. まとめ。


1. dG/GとdY/Yの正比例関係についての、これまでの記事まとめ。

ここからスタート、「【貨幣循環】貨幣循環導入の3点セット

  • 貨幣循環てなんだろうね?なんでGDPの計測はあの式なの?貨幣循環速度の見積もり方法、精度悪すぎて草。
  • 循環フロー図、GDP測定式、Y=MV=PQを悪魔合体。
  • これらの一貫した描像から次の関係が得られる。M=G+I、V=1/(1-β)。貨幣の流れを考えたらM=G+I。CとT+Sの割合の指標であるβなら、循環速度のキーパラメータとして納得。


なんかdG/GとdY/Yの正比例関係というのがあるらしい。「【貨幣循環】歳出伸び率とGDP成長率の関係(MVとMの各変化率の関係)

  • あれ、M=G+I、V=1/(1-β)をいじったら、dG/GとdY/Yの正比例関係を説明できそうですね。
  • 必要な条件は、G~I、dV/V=0。どこにデータがあるかな?


OECDからデータとってきたわ。「【貨幣循環】貨幣循環速度Vの成長率 (33カ国、最近20年間のデータ)」

  • dV/Vの平均値は0付近に分布。
  • βの範囲は0から1。それに対して政府支出は桁で増加し続けるため、dG/Gに比べてdV/Vが小さいのは納得のいく話。
  • OECDにはなんで投資(I)のデータがないんや…。


2. 日本とアメリカのGとIの年変化。

以下、日本とアメリカのGとIの年変化です。


日本のGとIの年変化。横軸がG、縦軸がI。縦軸横軸ともにログスケールです。シンボルの違いは取得データの違いです。(データの説明は今後追記します。といってももちろん政府発行のデータです。)


アメリカのGとIの年変化。横軸がG、縦軸がI。縦軸横軸ともにログスケールです。

日本の場合はGとIの正比例関係!、とはいいがたい時代もありますが、係数の変化はあれどGとIが比例していることに変わりはありません。従って、例えばG=aIとおくことができます。従って、dM/M = d(G+I)/(G+I) = dG(1+a)/[G(1+a)] = dG/Gが得られます。


3. OECDのデータによる、dG/G、dY/Y、dV/Vの関係。


以前のdV/Vの図と同じデータセットで、dG/Gに対してのdY/Y(青丸印)とdV/V(緑丸印)の分布です。実線は、傾き1で原点を通る直線です。

この図からは、それなりの分散はあるものの、dV/Vの平均的な変化量は0近傍であり、それに比べてdG/GとdY/Yが正比例関係をみせていることが分かります。(緑丸の一点がすごい位置にありますが、、、)

従って、二番目の記事での数式の展開で示したように、G=aIとdV/V=0から、dY/Y=dG/Gの関係を示すことができました。


4. まとめ

みなさん、超弦理論(超ひも理論)はご存じですか?ちょっと古いかもしれませんが。私は全く理解できません。ただ科学者として言えることは、超ひも理論を含めた科学の多くの理論は、より多くの自然現象を説明しようという試みだということです。そういう試みが積み重なって現在の科学は形成されています。

貨幣循環に基づいた私の仮説は、超ひも理論よりずっと単純です。しかしながら、私の仮説はGDPの測定式と貨幣循環を矛盾なく説明し、精度の良い貨幣循環速度(M=G+I, V=1/(1-β))を導きます。そして今回のdG/GとdY/Yの正比例関係も説明できました。この仮説は、貨幣循環に基づいてマクロ経済の大事な要素を説明できています。

私はこの仮説が、需要と供給の観点に基づいた現在のマクロ経済学よりも、マクロ経済の一部分を、おそらくは核心的な一部分をよく説明できていると思います。さきほどの超ひも理論の節で言及しましたが、より多くの自然現象を説明できるのが良い仮説です。私の仮説は説明できることはまだ少ないですが、マクロな経済現象を説明するための方向性はそれほど悪くないと考えます。


2024年7月23日火曜日

経済学物理学クイズ、水路に流入した水は何回転したか?

以下、クイズの概要を述べ、次に細かい設定を述べます。

水路についての数量A、B、Cが与えられます。このABCを使って、水源(蛇口)から水路に流入した水が水路を何回循環し、水路から流出するのか、概算できる二つの式を与えます。どちらの概算が適切か、選択してください。

広大な水路(ブラックボックス)+水源+貯水池+水源と貯水池の間の水路。
  • 一定期間、水源(蛇口)から流れ出た水量はA。(ある断面で測定。A>0)
  • 一定期間、水源と貯水池の間の水路を流れる水量はB。(ある断面で測定。B>0)
  • これまでの全期間において、水路から貯水池へと流れた水量はC。
  • 簡単のために定常状態。水量A、Bは時間的に変化しない。
  • 広大な水路(ブラックボックス)は閉じている。

選択肢である概算式。

概算式その一、(A+B)/A。    

概算式その二、(A+B)/C。

「循環の回数を求めるのに、概算式その二なんかありえんやろ」と思った科学者技術者あるいはその卵かもしれないアナタm9(・ω・)!第3節「本問題の意味」へどうぞ。



内容

  1. 問題設定詳細
  2. 選択肢(概算式)
  3. 本問題の意味



問題設定詳細

循環回数の概算をしたいので物理学っぽい感じで記述しています。理想的な状況を考えています。好意的に解釈してください。

  • その水路は皆が利用しています。しかし水路はとても広大なため、一人がその全貌を把握することは困難です。そのためにブラックボックスとなっています。
  • 水源と貯水池の間の区間は、水路が収束しています。この区間は、水路全体の長さに対して十分短い区間です。この区間の上流では一定量の水が貯水池に流れ出ています。その下流では一定量の水が水源から流れ込んでいます。簡単のために、この両者の水量は同量、時間的に変化しない、と仮定します。
  • この水路では、一か月に一度、水が循環しています。回転速度、循環速度は1回転/月となります。(この設定はここでは不要なのですが、現実の経済を考えるときに必要となります)
  • 水路から水があふれることはありません。水源からは水が無限に湧き出し、貯水池の容量は無限大です。
  • 水源と貯水池以外に発散・吸収の要素は存在しません。

この流入量と流出量、および貯水池で計測された水量が与えられます。

  • 水源から一定期間に流れ出た水量A。
  • 収束水路を一定期間に流れる水量B。
  • 貯水池の水量C。


選択肢(概算式)

概算式1、(A+B)/A

概算式2、(A+B)/C

両者の式では、分子がA+Bで共通しています。水源から水路に流入した水量がAで、貯水池と水源の間で計測された水量がBなので、広大な水路のどこかに適切な断面を設定すれば、A+Bの水量が計測されます。

問題は分母です。概算式1では、分母にAをとり、水路を流れている水量A+BがAの何倍であるかを計算しています。これは言い換えると、流入した水量Aがどの程度の期間(循環回数)、水路にとどまるのかを計算しています。概算式1は、水路を何回転すれば水路から貯水池に流れ出るかを計算しています。

流体で考えることが不慣れならば、例えば粒子的に、それもごく単純にAをボール1個、Bをボール2個とでも考えてください。

概算式2では、貯水池に貯まった水量Cを分母としています。Cは時間経過により増加するので、この概算式では、AとBが一定でも、時間が経過するほどに、得られる値は小さくなります。これでは、水源からの水量Aが水路を何回転しているかは計算できません。計算に不適切なこの概算式を出した理由は、経済学における貨幣の循環速度がこの計算方法を採用しているからです。


本問題の意味

今回のクイズは、経済学の貨幣の循環速度の導出方法を、流体的に置き換えたものです。今回のA+Bは、経済学のY=C+G+I=C+T+Sを置き換えたものです。もっといえば、A=G+I、B=Cと置き換えています。(今回採用したCと経済学のCが混ざってていすいません。)

これまでの記事で私が提案している計算方法は概算式1、経済学で採用している計算方法は概算式2です。完全に概算式2とイコールではないのですが、概算式1でないことは確かです。「私が採用している」と書きましたが、この概算は科学者技術者が普通に採用するであろう見積もりです。この記事で主張したいことは、以下の二点です。

  1. こんなおかしな見積もりをする学問が経済学と呼ばれている。
  2. 経済学を基盤とする経済政策によって、特に日本において国民生活は脅かされ続け、科学技術の発展は阻害されている。

この短い記事で、経済学のもろもろの拙さを詳細には書けません。概算式2として示した経済学の貨幣の循環速度の導出についても、科学者技術者の皆さんは「そんなおかしな見積もりをする定量的な学問が存在するわけないだろ、いい加減にしろ!(ドンッ)」と思われるかもしれません。しかし残念ながらこれは現実です。この貨幣循環についてのおかしな計算方法が100年も議論され続けていることを、科学者技術者のみなさんは信じられますか?

私が科学者技術者のみなさんにお勧めすることは、一か月、なんとか時間を作って学部生向けの経済学の教科書を読んでください。一年間、例えばなぜ「Y=C+G+I=C+T+S」で経済規模が測定できるのか、考えてください。「物質的に豊かになる」とは、定量的に何を意味するのか、どう測定するのか、考えてみてください。研究の出発点になりえる仮説の材料は多くありません。参考までに、既存の経済学の知識の範囲で私はこう考えました

(経済学の教科書にはいろいろなトピックが挙げられていますが、それらが統一されたものの見方、一つの仮説によって統一的に記述されているわけではありません。私にはミクロ経済学の原理(需要と供給の均衡)でマクロ経済学の現象(貨幣循環)を説明しようとして、失敗し続けているように見えます。)

日本人の科学者技術者が1年間まじめに研究すれば、それで終了です。今の経済学よりもずっとましな科学的経済学の基盤はできました。お疲れさまでした。「失われた30年間」は再来しません。科研費や企業研究費も増えて研究し放題、とはいきませんが再び日本は先進諸国として、科学技術をけん引することができるでしょう。

この期待される経済学の変化は、かつて科学がもたらした変化同様、不可逆的な認識の変化です。天動説から地動説への変化です。それと同じように、我々は、科学技術による不可逆的な認識の変化を経済と経済学にもたらすことができます。そして、我々の生活は「致命的に」良くなるでしょう。かつての科学による認識の変化同様、ある種の権力者達にとっては文字通り致命的です。

経済、つまり人類による商業活動も自然現象の範疇です。経済学で起きていることは、何一つ、宇宙の法則を乱してはいません(とりあえずそう仮定してみましょう)。それとも「経済は複雑だから科学的に研究することは難しい」なんて数学的証明を、みなさんどこかで見かけましたか?

およそ100年前に量子力学が形成されたように、現在が科学的経済学が形成される時期でもおかしくありません。データサイエンスやAIも面白いです。研究を楽しんでください!


【貨幣循環】の記事を読む順番

2024年7月7日日曜日

科学論文の書き方、#3。英語と日本語と情報伝達方法の普遍性。

前回の記事の第3節で書いた私の主張、「人間にとって普遍的に理解しやすい情報の伝達方法」の存在が私の願望であるという自覚はあります。同時に、この願望は私の不満の裏返しです。私の不満は、「英語は科学論文執筆に適しており、日本語は適していない」という主張への不満です。

この英語適切日本語不適切の主張は、「科学英語論文のすべて 第2版 | 日本物理学会 」から知りました。科学者らしく質問しましょう。日本物理学会への質問は、「どのような仮説と検証を行い、その結論に至ったのか?」、です。

第1節では、この英語適切日本語不適切の主張に対する反論を述べます。第2節では、英語適切日本語不適切の主張の検証方法について述べます。


1. 英語適切日本語不適切への反論

私の反論は以下の二点です。

  1. 日本語であれ英語であれ、どの言語であれ、最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルを選択することで、科学論文に相当する情報伝達を実践できる。
  2. 英語適切日本語不適切を主張する日本人研究者たちは、自身の観測範囲にいるテクニカルライティングに長けた欧米研究者とのコミュニケーションの結果のみから、英語適切日本語不適切を主張しているのではないか。

1.1 日本語でも英語でも科学論文は執筆できる

1についてですが、私だけでなく、多くの人が実践している行為を紹介します。英語論文、英語記事を作成する際、最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルで日本語の文章を最初に執筆し、それを機械翻訳し、英文を調整します。実体験として、明らかに日本語でも科学論文のスタイルで文章を執筆できます。日本語に科学論文のスタイルを適応したら、その意味が理解できなくなるということはありません。

現在では、日常的なゼミ発表、学会や企業のプレゼンにおいて最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルが採用されています。日本語でこのスタイルで発表されたら、内容を理解できなくなりますか?

英語において、逆もまた真なりです。英語において、理由や詳細から先に書き始めたら、それらの英文を理解できなくなるわけではありません。きっと結論に至るまでに、聞いてる人、見てる人はイライラするでしょうが。

これらの事実から導かれる結論は、次のとおりです。

×、「英語は科学論文執筆に適しており、日本語は適していない」

〇、「現在の英語の日常的な用法は、科学論文における情報伝達方法と親和性がある。現在の日本語の日常的な用法は、科学論文には適していない。」

この「現在の日本語の日常的な用法は、科学論文には適していない」ことの意味は、これまでの日本の文化として、その主な会話のスタイルが「理由を先に述べ、結論を後に述べる」、ということです。

繰り返しますが、日本語でも英語でも最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルで執筆することは可能です。となると、このスタイルが何かしらの特徴、特性を持っていることが推測されます。私の主張では、この最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルは、「人間にとって普遍的に理解しやすい情報の伝達方法」です。

1.2 日本人研究者たちによる日本語サゲ英語アゲ

冒頭の質問を繰り返します。「どのような仮説と検証を行い、『英語は科学論文執筆に適しており、日本語は適していない』という結論に至ったのか?」

1についてある程度の同意が得られるなら、2についてはそっと目をそらして、今後は触れないのが日本人の大人の態度かもしれません。とはいえ、日本物理学会の名前のもと、論文執筆教育の一環として情報を流布し、図書の出版によってそれなりの収入をあげていたのなら、一定の処置はすべきでしょう。

発展的解消としては、最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルについて日本語と英語の差異を定量的に研究して、結果を日本物理学会の学会誌(和文)に載せ、「科学英語論文のすべて 第3版」として内容を改めて出版することでしょう。もっと言えば、たぶん科学技術系の人間にとって最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」スタイルでの報告書作成(科学論文含む)はやって当たり前のことなので、その辺の社会普及、教育についてしっかり活動すると、日本物理学会としては、「ちょっとした不適切なミス」を補って有り余るような、社会的意義、社会的存在感を得られるのではないでしょうか。


いろいろ海外の学会にも出席して、その土地の人々と交流して、さらには映画や海外ドラマも楽しんで、どう考えても「英語すごいね!日本語駄目だね!」とはならない。どこも変わらず、同じぐらい優秀かつ同じぐらい愚かな、喜怒哀楽の人々がいて、日本語も英語もそんな人々が使っている言語にすぎない。英語の使用によって、何か良いことだけがあるとは到底思えない。

根本的に、「英語は上水道のように論理展開し、日本語は下水道のように論理展開する」という例えが気に入らない。執筆者たちは、どれだけの悪意を込めたのか。それとも軽いノリだったのか?


科学論文の書き方、#1。節内部、段落内部での「最初に結論(範囲)を伝え、次に詳細を伝える」の実践

科学論文の書き方、#2。文は、主語を短く、その後を長く。

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