概要。
- 最近のスパコン「京」や「富嶽」を用いた研究では、経済を全体を定量的に理解するための、拡張(一例として詳細なサプライチェーンの実装)が行われている。この拡張は、例えば科学技術の数値計算における空間方向への拡張と理解できる。
内容
- 日本のスパコンの課題研究。
1. 日本のスパコンの課題研究。
GDP予測の研究のために、日本の経済学におけるスパコンの使用状況を調べた。興味深く有益な課題が研究されていると思うが、科学技術の数値計算からは大きく遅れを取っている印象である。
対象のスパコンは、地球シミュレータ、京、富嶽。2002年以降である。
| スパコン名 | 採択年度(期間) | 課題名 | 課題責任者 | 主な研究内容 |
| 富岳 | 2023年度〜 | 「富岳」が拓くSociety 5.0時代のスマートデザイン | 坪倉 誠(理研/神戸大) | 人流・物流・経済活動を統合した都市シミュレーションの実施。 |
| 富岳 | 2020年度〜2022年度 | 大規模計算とデータ駆動手法による経済構造の解析 | 井上 寛康(兵庫県立大) | 全国の取引ネットワークを用いた感染症や災害の経済影響予測。 |
| 富岳 | 2020年度 | ポストコロナの経済社会のレジリエンス評価(政策対応利用) | 安田 洋祐(当時 大阪大)他 | 感染対策と経済活動(GDP)を両立させるための最適政策の模索。 |
| 京 | 2017年度〜2018年度 | 人工市場を通じた金融市場の安定性に関する研究 | 和田 健(学習院大) | HFT(高頻度取引)が市場の乱高下に与える影響の解明。 |
| 京 | 2015年度 | 大規模多世代経済モデルによる社会保障政策の分析 | 慶應義塾大学 等 | 日本の人口動態と年金・税制の長期的な持続可能性の計算。 |
↑Gemini調べ。後述の「High Performance Computing Infrastructure」のページでは採択課題のPDFが公開されているが、量が多く、独力で確認するのは諦めた。
なお、地球シミュレータについては、平成19年度と20年度に「高頻度経済データの経済物理学解析」という課題名での採択があった。
下記の動画は、「大規模計算とデータ駆動手法による経済構造の解析」についての紹介動画である。サプライチェーンの詳細な実体の解析を紹介している。
この「サプライチェーンの詳細」は、財・サービスを供給する「企業」の一部である。
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| 政府と金融市場を追加した貨幣循環図。実線は、Y=C+G+I=C+T+Sを測定している断面を意味する。矢印は貨幣の流れ。財・サービスと労働力は逆方向に循環する。 |
経済学(GDP予測)をスパコンが必要なレベルにするためには、そして天気予報レベルでGDPを予測するためには、先の動画で示されるようなサプライチェーンの詳細が、全ての企業、財・サービスと生産要素の2つの市場、家計、金融市場について必要である。
天候変動のように、時間単位(分単位)での気温、湿度、気圧その他についての時間的空間的な変動を追跡するなら、その時間的空間的なスケールに見合ったの詳細なグリッド(格子点)を設定し、時間変化を計算する。今回のような「サプライチェーンの詳細」とは、科学技術の数値計算における空間的な拡張と理解できる。
以下、今回の記事で参考にしたリンクである。
日本のスーパーコンピュータ(Wikipedia)
地球シミュレータ(JAMSTEC)
課題選定の結果(High Performance Computing Infrastructure)
ポスト京重点課題4(JAMSTEC)

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