2021年3月10日水曜日

【電子書籍】マクロフロー経済学 1 トリクルダウン仮説の定量的理解

マクロフロー経済学 1 トリクルダウン仮説の定量的理解(AmazonKindle


マクロフロー経済学 1 トリクルダウン仮説の定量的理解(GooglePlay


トリクルダウン仮説を理解するために、定量的に試算してみた。

経済学者、経済学を学んだ人達にとっては、論文もなく、まともに考える必要も無い話なのだろうが、世の中に出回ってるそういう事柄にきっちりトドメを刺すのが研究者の仕事である。

得られた結果は、所得格差が大きくなるほどトリクルダウンは機能せず、消費循環は阻害されるというもの。

これはトリクルダウン仮説とは真逆の結果。

今回の試算は単純過ぎるモデルだが、核をしっかり抑えてるのでこれで良い。

反論も改良も大いに歓迎だが、その全ては定量的に行われなければならない。


この表は、トリクルダウンを実現して消費を回すために高所得者が消費活動をしなければならない企業数を表している。左端のa1:a2:a3は、大企業を3層に分けた際の所得比。上端のc1:c2:c3は、同じく3層に分けた際の人数比。

この表は桁の比を示しているので、例えば大企業の経営陣の所得が10億円台なら、大多数の社員の所得を100万円としてその所得比a1:a2:a3は、10^3 : 31 : 1 (10^3 = 1000)となる。中間層の所得比の31は1000の平方根としている。

人数比の場合、10万人台の大企業なら、経営陣(取締役会)が10人前後で構成されているとして、その人数比は、1 : 100 : 10^4 である。

ここで例に挙げた大企業なら、トリクルダウンを実現するために経営陣や中間層が消費活動をしなければならない中小の企業数は、39と60となる。

所得比(所得格差)が大きくなるほど、トリクルダウンを実現して消費を回すために必要な企業数は増加する。所得比が10^3 : 31 : 1の場合、必要な企業数は100前後になる。土曜日曜の年間合計日数は104日である。100社相手に消費を行うなら日数的には間に合うが、個人的な欲求を無視して毎週末に高額な消費を行うことは現実的ではない。ましてやトリクルダウンに必要な企業数が1000社、10000社ともなれば実現は不可能である。

従って本書における結論の一つは、「所得格差が大きくなるほどトリクルダウンは機能せず、消費の循環は阻害される」、となる



以下は、電子書籍の概要。

===

トリクルダウン仮説を検証するための定量的な試算を行った。所得格差が大きくなるほど、トリクルダウン(富裕層からの富の滴り落ち)は機能しないという結果が得られた。

このモデルでは、家計と企業の間の貨幣フローの循環を考える。家計を高所得者、中所得者、低所得者の3層に細分し、企業を大企業、中企業、小企業に細分した。貨幣フローが循環した状態では、大企業の高所得者の所得が増えれば、それに必要な顧客(大企業以外の中所得者、低所得者)の人数は増える。循環なので、高所得者は増えた顧客たちが勤める中小企業に対して消費を行う必要がある。これがトリクルダウンである。高所得者と低所得者の所得格差が大きくなると、トリクルダウンに必要な中小企業数が増大する。これは際限なく増大するので、やがては高所得者の消費活動が時間的に困難になる。

これは、「富裕層がより裕福になれば、富裕層以外がトリクルダウンの恩恵を受ける」というトリクルダウン仮説とは真逆の結果である。


第1章 導入

第2章 試算

 2.1 試算の概要

 2.2 試算の一例

 2.3 パラメータサーベイ

 2.4 現実の大企業の経営陣

第3章 議論

 3.1 トリクルダウンが機能しない理由

  3.1.1 不等式

  3.1.2 時間的制限

  3.1.3 心理的障壁

  3.1.4 富裕層=消費行動弱者

 3.2 試算モデルの精緻化

  3.2.1 導入

  3.2.2 他の経済主体

  3.2.3 企業モデルの多様化

 3.3 グラスタワーとワインの例え

 3.4 現実のフロー

第4章 まとめ

参考文献

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