2020年10月8日木曜日

【MMT】政府の国債発行が新たな銀行預金を生み出す構図

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本記事の表題は、三橋貴明著『国民を豊かにする令和の政策大転換』の第3章『MMTの勃興』の一節の表題である。

本記事では、「政府の国債発行が新たな銀行預金を生み出す構図」を、図示によって説明する。

この図示では、政府、中央銀行、市中銀行、企業のそれぞれの債権と債務と、日銀当座預金と銀行預金の発生を明示する。


以下の図は、「【議員連盟】日本の未来を考える勉強会」で公開されている三橋の資料(MMTポリティクス ~現代貨幣理論と日本経済~)のp9である。


『国民を~』の第3章『MMTの勃興』でも使われている。

初めて読んだ時は、文章を読んでもこの図を見ても、素直に飲み込めなかった。

図の①から⑤の内容は、『政府の国債発行が~』の節に書かれている。その内容は、

  1. 政府の国債発行により、市中銀行の日銀当座預金が政府の日銀当座預金になる。
  2. 企業の生産活動に対し、政府は、日銀当座預金を担保とした政府小切手で支払う。
  3. 企業は、政府小切手を市中銀行で換金する(銀行預金発生)。
  4. 企業は、銀行預金により、取引先企業への支払いや社員への給与支払いを行う。
  5. 市中銀行は、小切手を日本銀行に持ち込み、日銀当座預金が発生する。

専門家の方々には、上の図と①から⑤の文章の説明で十分なのだろうが、非専門家の自分には素直に理解できなかった。

現在の自分の理解では、⑤まで行くと①につながり、繰り返しが可能な過程である事は分かる。

ただ、この図では市中銀行は2つあり、一見してお金(日銀当座預金と銀行預金)の流れも閉じていない。

そのため、初見では素直に飲み込めない。

今回の図示の動機は、この①から⑤のやり取りを理解する事である。

全く経済学の知識はないが、スジは通ったと思う。

次の図は私が作成したもので、債務と債権を明確にして、上記の①から⑤のやり取りの累積結果を示している。


中央の破線を境界として、その上部は日銀当座預金の世界であり、下部は銀行預金の世界である。

番号付けされた債務と債権は対になっている。

上の図からは、日銀当座預金世界の政府の債務(赤字)は、中央銀行と市中銀行の債務と債権を介して、銀行預金世界の国民の債権(黒字)に連鎖している事が分かる。

では、①から⑤の過程を追っていこう。


図示の概要

登場する団体は、政府、中央銀行、市中銀行、企業である。


政府と市中銀行を結ぶ破線は、「中央銀行預金(日銀当座預金)の世界」と「流通貨幣の世界」を分ける境界である。

『国民を~』を読み返すと、「越えられない壁」は言いすぎに思うが、まぁこのままで。


二種類の貨幣は境界によって隔てられているが、国債(政府の借用証書)はこの境界線を越境可能であるため、債務と債権の対が二つの世界をつないでいる。


-1, 前提の前提

『政府の国債発行が~』では、箇条書き①から⑤が貨幣の発行過程を説明している。

これらの過程の前提を「0」、前提の前提を「-1」と番号付けした。


前提の前提として、市中銀行は国債を持ち(債権零)、政府は債務を持つ(債務零)。

0. 前提



市中銀行は、保持する国債を中央銀行(日銀)に売却する。

中央銀行は、市中銀行の口座に売却額を書き込む(日銀当座預金の発生)。


この時、国債の売買によって債権零は中央銀行に移動する。

日銀当座預金の発生によって、市中銀行は債権①を持ち、中央銀行は債務①を持つ。

1. 政府と市中銀行の国債売買


この段階では、政府が国債(借用証書)を発行し市中銀行が購入する事によって、中央銀行の口座間のやり取りが発生し、「市中銀行の預金」が「政府の預金」となる。


国債の売買によって、市中銀行は債権②を、政府は債務②を持つ。

2. 政府事業と小切手による支払い


次に、政府の依頼によって企業が生産活動を行うと、政府はその代金を小切手によって支払う。

この小切手の担保となるのが、中央銀行にある「政府の預金」である。


このやり取りによって、企業は小切手(債権③)を持ち、政府は債務③を持つ。

3. 市中銀行での換金


企業は、この小切手を市中銀行で換金し、市中銀行の口座に預金が発生する。


この換金によって、市中銀行は債権③を持つ。

そして企業が市中銀行に預金を持った事で、企業は債権④を持ち、市中銀行は債務④を持つ。

4.  銀行預金からの貨幣流通



企業は、この市中銀行の口座から、取引企業への支払いや社員への給与支払いを行う。



ここでは口座間取引によって、社員や取引企業も債権④を分け与えられる。

5.  小切手の売却



市中銀行はこの小切手を中央銀行に売却し、中央銀行の口座に預金が加えられる。

このやりとりは前提0における国債の売却と同様で、この5aのパネルは0aのコピーである。



この小切手の売却により中央銀行が債権③を持ち、そして「市中銀行の預金」の発生により市中銀行は債権⑤を持ち、中央銀行は債務⑤を持つ。

ここで日銀当座預金に「市中銀行の預金」が発生した事により、この過程⑤が過程①につながり、この貨幣流通過程を再度繰り返す事ができる。

少し分かりやすくするために、中央銀行の「政府の預金」を「市中銀行の預金」に戻してまとめよう(債権②と債務②は消滅)。



ここに至って、「日銀当座預金世界の政府の赤字は、流通貨幣世界の国民の黒字」という状態が明確になった。

企業は市中銀行に預金を持ち、市中銀行は中央銀行に預金を持つ。

結論として、日銀当座預金世界の政府の債務(赤字)と流通貨幣世界の国民の債権(黒字)は、中央銀行と市中銀行の債権と債務の橋渡しによって連鎖している。


「政府が国債(借用証書)を発行すると、銀行預金として国民が貨幣を持つ」、この貨幣の流通経路は、「国債発行により国民の預金を奪う」という主流経済学派、国債発行を渋る緊縮財政派と真逆の考えである。

現代貨幣理論の考え方が日本国民に浸透して、日本政府が緊縮財政から方針転換する事を強く願う。

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