言語の壁
共通の言語の使用は、お互いを理解し、情報処理を円滑に進めるための前提条件です。情報処理の観点から見ると、言語を共有しない人々は、それぞれ個別のグループ(情報処理系統)とみなされます。異なる言語を使用する小さな情報処理系統が多数存在したとしても、圧倒的に大きい一つの情報処理系統があれば、それらの小グループは、大きな情報処理系統に従属して、集団としての形をとる事ができます。これは、処理できる情報量の差が圧倒的なため、自然な事です。
この集団の一例は、国家です。情報処理系統が人間の集団である場合、圧倒的な人口差があれば、少数派の人々は多数派の人々によって行われる情報処理に従い、その利益を享受できます(そうするしかありません)。少数派の人々の中には、利益を求めるために、多数派の人々の使用する言語を学ぼうとする事もあるでしょう。
しかし、一つの小さな情報処理系統が大きくなり、大きな情報処理系統との差が、桁ではなく数倍になってくると、もはや一つの集団としてみなす事はできなくなります。情報処理系統としての機能差、処理できる(処理している)情報量の差も圧倒的ではなくなります。こうして集団は分裂します。
この分裂が、特定の領土の上に成り立つ国家の中で起きる時、お金、権力、文化、色々なものを巻き込んだ簡単には理解、解決できない状況が生まれます。
メキシコ国境の壁
アメリカの大統領選、共和党の大統領指名候補にドナルド・トランプ氏が選ばれる事がほぼ確実になりました。アメリカ国民の間に物議(おそらくは激しい賛成と反対)をかもしている彼の主張の一つが、メキシコ国境に壁を作る事です。これは、メキシコを経由してアメリカ国内に不法入国する中南米のヒスパニック系の人々を阻止するためです。
CNN.co.jp, トランプ氏、「国境の壁」建設費はメキシコ負担 交渉で説得
アメリカは移民で成り立ってきた国です。今でも安価な労働力としての移民は歓迎しているでしょう。ただ、治安問題など、様々な問題を引き起こすとなると話は別です。
ちょっと古いですが、2010年の`アウトサイダーへの憧れ’さんの記事に載っていた池上彰さんのTV番組によると、アメリカのヒスパニック系住民は人口の15%を占めます。また別のデータですが、アメリカの総人口3億人の内、1000万人以上が不法移民です。不法移民が30人に1人って、ちょっと信じられない状況です。
移民については働き場所を奪われるといった問題もありますが、ここでの問題は、この大半のヒスパニック系の不法移民がスペイン語をしゃべる事はできても、英語をしゃべれない事です。全ての不法移民が犯罪者ではないとしても、30人に1人程度、言葉の通じない人間がいるというのは、結構不安になる状況です。
私が時々見ているアメリカのサスペンスドラマ、CSI:マイアミや、BONES(ボーンズ)にも、このヒスパニック系(不法)移民の生活と犯罪の場面がたびたび出てきます。彼らの多くは、コミュニティを形成して、ストリートやブロックごとに集まって住んでいます。英語を理解できない住民が多いので、警察が犯人を連行する時は、スペイン語で事情を叫びながら連行します。そうでもしなければ、仲間をさらわれそうになっている多数の住民が暴動を起こすからです。
日本に住んでいる私が、アメリカのドラマの内容をそのまま鵜呑みにする事は危険ですが、それほどひどい誇張表現では無いと思います。メキシコ国境に壁を作ろうという動機も、テロリストと同じような狂人の発想、とまでは言えません。
ちなみに、壁が機能するとは思えません。もしそうしたら、不法移民は海を渡ってくるでしょうし、アメリカ国境を全て壁で囲うのも馬鹿げた話です。
一つの壁を作っても、もう一つの壁は取り除け
`みんなの海外取引ブログ’さんの記事によると、最近のアメリカの出生率は、白人が「1.8人」、アフリカ系アメリカ人は「2.2人」、ヒスパニック系は「3.0人」との事です。さらに、
アメリカ商務省国勢調査局の将来人口推計によると、2050年にアメリカの総人口は4億人を突破し、ヒスパニック系の人口が白人の人口を上回ると予測されています。と書かれています。英語を喋れないヒスパニック系不法移民の何%かは、今はまだ、犯罪者というカテゴリーにとどまっています。しかし、アメリカ政府が何もしなければ、2050年以降に国を二つに分ける状況も現実味を帯びてきそうです。
トランプさんが本当に壁作りを実行するかはともかく、国内の言語の壁は真剣に取り除くべきです。移民の方々が文化やアイデンティティーを保持するのは問題ありません。推奨されることでしょう。しかし、移民の方々は、英語を理解し、しゃべる必要があります。
これは日本も同じ事で、お金儲けだけを夢見ている経済人や政治家の方々には、このような問題は耳に入らないのでしょう。おそらく、移民の皆さんは、彼らの隣に住むわけでもないでしょうし。
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