前回の記事「【貨幣循環】名目GDPの増減と経済格差の増減の分離 その1」では、名目GDPの増減と経済格差の増減が独立である事を、数式と観測値によって示しました。この記事では、独立な名目GDPと経済格差の増加と維持の組み合わせがどういう状況を引き起こすのかを議論します。以下の表がその状況のまとめです。
本記事では、政府支出及び名目GDPの減少は議論しません。どう考えても良い状況ではないので。
これらの組み合わせを導くために、人口と財・サービスの増減を経済格差の増減に結びつけて議論します。数式は出て来ないので、論理的に堅固ではありません。ただし、個人の能力の物理的な限界を用います。経済格差の増減と財・サービスの増減についての論理構成は次のようになります。
- 人間の能力と行為には様々な物理的な限界が存在する。
- 個人の認識能力と消費能力にも明確な限界が存在する。従って、少数の顧客(富裕層)よりも、桁違いに多数の顧客(中間層)の消費行動によって財・サービス市場に多くの貨幣が流れ込む。
- 経済格差が小さく、中間層の経済的豊かさが継続するなら、貨幣循環によって消費に多くの貨幣流が流れ、衣食住に加えた豊富な財・サービスが更新・拡張される。
ここで中間層の有無は、平均消費性向βの分布の山型とL字型によって示されます。この経済格差と財・サービスについての議論と、前回の数式によって示した政府支出の増減に伴う名目GDPの増減の組み合わせをまとめたのが冒頭の表です。