2022年7月12日火曜日

【貨幣循環】貨幣と労働力と資源の循環、および需要と供給の定量化

マクロ経済学の冒頭では循環フロー図が紹介され、企業と家計と市場の関係が貨幣循環として認識される。本記事では、貨幣の循環と同様に経済学に欠かせない概念を紹介する。それは労働力と資源の循環である。そしてこの三種類の循環のもとで、財・サービス市場における需要と均衡について提案を行う。


1. 貨幣と労働力と資源の循環

以下の三つの図は、貨幣と労働力と資源の循環を示している。

貨幣の循環。


労働力の循環。


資源の循環。


これらの図から分かるように、貨幣循環に対して、労働力と資源の循環は反対方向を持つ。

労働力の循環は完全に閉じている。経済活動の主体が人間であるため、これは自然な事である。ただこれはサービスに従事する労働者についてであって、土地や企業の所有者たちについてではない。この考え方は適切だろうか?この両者に流れる貨幣流量の差がもたらす影響は調べる必要がある。

物質的循環については、現代社会の抱える産業廃棄物やマイクロプラスチックの問題からも認識されているだろう。人間は経済活動のために、より広範にはこの世界で生き残るために、自然から資源を得て加工し、財として活用している。問題は、この加工された財が簡単には自然に還元されない事である。経済学においては財・サービスの販売による利益ばかりが着目されているが、この加工された財による不利益も考慮されるべきである。

この節では貨幣に加えて、労働力と資源の循環を紹介した。経済活動が貨幣と財・サービスの交換である以上、貨幣と労働力と資源の他には、考慮すべき要素は無いと考えられる。むしろ、経済という現象を総合的に説明するためには、労働力と資源を考慮しなければならないはずである。

現在のように、マクロ経済学において労働力と資源の循環が無視軽視されている状況は、マクロ経済学の全体像について偏った観点を与えていると思われる。経済学が貨幣のみを研究するためには、労働力と資源を無視しても、貨幣のみに着目すれば全ての問題は解決するという証明が必要である。


2. 需要と供給の定量化

断りを入れておくと、この節では「需要と供給の定量化」には至っていない。その必要性を主張する。

現在のマクロ経済学とミクロ経済学の基本概念は「需要と供給の均衡」である。需要と供給は、二本の交差する曲線で示される。この需要と供給の実態は何であろうか?ここでの回答は、貨幣と労働力と資源である。

「需要と供給」という言葉は、少し曖昧で観念的である。供給が財・サービスを与える事である一方、需要とは家計の消費行動あるいはその欲求である。これはこれで使い勝手の良い言葉であり、マクロ経済学とミクロ経済学の基本概念たり得ている。

ただ実際に「需要と供給が変化して、財・サービスの価格と量が変化した」と考えるとき、「需要と供給」は一体何であろうか?どんな変数であろうか?「需要と供給」の曲線は定性的な説明を与えてくれているが、では定量的には曲線を書くことは可能なのか?もし定量的な曲線を実際に書けないなら、その理論が現実を(少なくともある範囲で)完全に説明できているとは言い難い。見落としている要素が、あるいはより適切な説明があるのではないだろうか?

前節の、貨幣と労働力と資源の循環図を眺めていて、一つ理解できた事がある。財・サービス市場の「需要と供給の変化と、財・サービスの価格と量の変化」をもたらす要因は、貨幣と労働力と資源の流入量の変化以外に存在しない、という事である。これらの定量的な変化によって、需要と供給の変化を記述しなければならない。

貨幣と労働力と資源の流入量の変化によって、販売される財・サービスの価格と個数が変化する事は当然である。しかし現在の経済学の説明では、貨幣と労働力と資源の変化は市場に入ると、需要と供給の変化に置き換えられ、そして価格と個数の変化にたどり着く。経済学の歴史的経緯はともかく、理論をシンプルにするためには、この中間の定性的な「需要と供給の変化」は省かれるべきである。

省くためには、需要と供給を定量的に理解する必要がある。貨幣も労働力も資源も価格も商品の個数も定量的だからである。そして何より、定量的であるからこそ「仮説と検証」のサイクルを回す事ができる。科学的=定量的、である。


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